「少くとも恋愛は、チャンスでないと思う。私はそれを、意志だと思う。」 太宰治の『チャンス』に出てくる言葉だ。『冴えない彼女の育てかた Fine』というライトノベル原作のアニメ作品に、純文学作家である太宰治の言葉を連想したことを意外に感じるかもしれない。しかし本作を一言で表すならば、この言葉が適しているのではないか。今回は本シリーズの魅力と描かれてきた意志について考えていきたい。 『冴えない彼女の育てかた』は2012年に原作1巻が発売され、フジテレビノイタミナ枠にて2度のテレビアニメ化も果たしている。主人公の高校生、安芸倫也が魅力的な女子キャラクターに囲まれながら、同人ゲーム制作にまい進するさまと恋愛の進展を描いた物語だ。原作者の丸戸史明はゲームのシナリオライターとしても活躍しており、テレビシリーズのシリーズ構成や劇場版の脚本を務めている。 イギリス人の父を持つ金髪ツインテールが印象的な幼馴