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ブックマーク / magazine-k.jp (12)

  • 貧困から図書館について考える

    3月8日、著書『生活保護リアル』(日評論社)にまとめられたネット連載など、生活保護についての多角的な報道を重ねた功績で貧困ジャーナリズム大賞2014を受賞されたみわよしこさんと、『困ったときには図書館へ~図書館海援隊の挑戦〜』(悠光堂)の著者である神代浩さんによる、第4回LRGフォーラム「貧困図書館 困ったときに頼れる図書館へ」を聞きに行った。貧困図書館生活保護図書館。一見不思議かもしれないこの組み合わせの接点とは何なのか。 しかしこの問いに入る前に、そもそも図書館とは何かということを考えてみたい。登壇者のお一人である神代さんは文科省の社会教育課長時に、住民がかかえる問題の解決を助ける各地の図書館を応援するための図書館海援隊という取り組みを始めた方である。私は神代さんの活動を最初に知ったとき、先に社会問題があって、そこから図書館に何ができるのか考える、という点に魅力を感じた。 先

  • 電子コミックの未来はどこに? « マガジン航[kɔː]

    今年は6月に講談社の月刊マンガ誌「少年ライバル」、秋田書店の老舗青年コミック誌「プレイコミック」が休刊。9月には小学館の月刊マンガ誌「IKKI」、集英社の同じく「ジャンプ改」と大手出版社のマンガ誌で休刊が相次いでいる。いずれも販売部数的には苦戦してきたが、個性的な作品を数多く連載し、それらの単行の売上で雑誌の赤字をカバーしてきた雑誌だ。単行が雑誌の赤字をカバーしきれなくなった、とすれば、マンガ不況を象徴するような事態である。 2014年は紙から電子への転換点 紙のマンガ出版が苦しんでいる一方で、勢いがあるのが電子コミックだ。 2014年8月、NHN PlayArtが運営するスマートフォン向け無料コミック配信サービス「comico」の人気作品『ReLIFE』(作画・宵待草)の単行がアース・スター エンタテイメントから発売され、たちまち10万部を超えて話題になった。電子コミックといえば、

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  • アマゾンは天使でも悪魔でもない

    ……そして意地悪をしているわけでもない。寡占市場のリーダーとしてやるべきことをやっているだけ、だから恐いのだという話。 米アマゾンと大手出版社のアシェット(Hachette Book Group)のあいだでの仕入れ値をめぐって交渉が難航、今月に入ってからアマゾンは、アシェットのをトップページのキャンペーンから外したり、類似書の推薦欄に他社のを表示したり、買おうとすると「入荷は3〜5週間先」という表示になったり、これから出る新刊が予約できなくなったり……という措置に出た。どう見ても露骨なイジメに見えるわな。 とりあえず「七掛け」(もちろん出版社によって率は異なるが)で取次に好きなだけを卸せる日と違って、アメリカではどこの出版社もこうやって書店や量販店を相手に、定期的に卸値のディスカウント率(日で言う「掛け値」)を決めるのだが、アマゾンが出現する前はもう少しのんびりしていた。5年

  • 第10回 なぜ人は書庫を作ってまで本を持ちたがるのか

    前回は電子化という方法で蔵書問題を解決したケースをみてきた。 武田徹さんと大野更紗さん。二人に共通しているのは、電子よりも紙のの方が読みやすいという考えだ。大量に電子化してしまったことを武田さんは後悔していた。日常的に電子化をくり返し、電子化したを後もちゃんと読むと言った大野さんにしても「リーダビリティは紙が上」「日語のは紙で手に入れたい」と言ったことを話していた。 全ての蔵書を電子化してしまうのは味気ないと僕も思う。iPadなどのタブレットの出現、読みやすさを劇的に良くするアプリの開発という二点によって、「電子化された書棚」というものの活用が可能になってきた。だけれども、それは、武田さんのような尖った人の新しいことへの挑戦か、場所がないけどをたくさん所有したいという矛盾を解決するための打開策として実践するか、どちらかでしかやる価値がないのではないだろうか。 物体としてのを増

  • リアル書店で電子書籍を売るということ

    三省堂書店とBookLive!は12月19日、の表紙をカメラで読み込むと電子書籍の検索や、書店員のPOP・コメントなどが表示できるアプリ「ヨミ Cam(よみかむ)」を発表しました。既に複数のメディアで記事になっており、SNSでの反響を見る限り比較的好意的に受け止められているようです。 それに対し、朝日新聞が12月22日に掲載した「対アマゾン、電子書籍で連携 書店や楽天など13社、めざせ『ジャパゾン』」という記事は、インパクトのあるキーワードもあってか、ネット上では批判的に捉えている方が多いように感じられます。今回は、この二つの似て非なる事象を通じ、「実店舗での電子書籍購入」の今後の可能性について考察します。 電子書籍の店頭購入サービスはすでに展開中 三省堂書店とBookLive!は以前から、店頭で電子書籍が購入可能な「デジ(でじぽん)」というサービスを展開しています。以前は三省堂神保町

  • ワシントン・ポストをベゾスが買ったワケ

    アマゾンCEOのジェフ・ベゾスがワシントン・ポスト紙を買収、というニュースに椅子から転げ落ちた。ポストの記者もI was floored.とツイッターでつぶやいていたので、誰にとっても青天の霹靂といったところだろう。 私は一瞬「アマゾンが?」と思ったのだが、これは間違いで、一説には250億ドルとも言われるベゾスの個人資産の中からワシントン・ポスト紙とその関連企業を2億5000万ドルで買い取ったという話。ってことは彼にとってはこの大金もお財布の1%というハシタ金。1万円持ってたから100円使ったった、みたいな。 とりあえずこのニュースのバックグランドを説明しよう。どういう影響がありそうかも。 首都ワシントンのリベラル系老舗紙 ワシントン・ポストは言わずと知れた創業135年という老舗。ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズと並び全米で影響力の大きい新聞で、社が首都ワシントンというのも

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  • 第3回 本で埋め尽くされた書斎をどうするか

    をテーマにしたエッセイや随筆、棚を紹介するを漁ってみると、僕が知らないだけで、実は「床抜け」はそんなに珍しいことではなく、起こりうるということを思い知った。それどころか床が抜けなくても、が大量にあるというだけで十分大変だということも、嫌というほどに理解した。 との格闘 その中から故・草森紳一のケースを紹介してみたい。著書の『随筆 が崩れる』(文春新書)には次のようなことが書いてあった。 ドドッと、の崩れる音がする。首をすくめると、またドドッと崩れる音。一ヶ所が崩れると、あちこち連鎖反応してぶつかり合い、積んであるが四散する。と、またドドッ。耳を塞ぎたくなる。あいつら、俺をあざ笑っているな、と思う。こいつは、また元へ戻すのに骨だぞ、と顔をしかめ、首をふる。 これは草森さんが風呂に入ろうとしての山が崩れ、浴室に閉じ込められたときの様子である。彼の住む2DKの空間の中でまったく

  • 第1回 本で床は抜けるのか

    木造二階建てアパートの二階にある4畳半の部屋に仕事場を移したところ、畳がすべて荷物で埋まってしまった。部屋の壁際三辺は立て掛けた棚や分解した机で覆われ、部屋の大部分を占めるそれ以外のスペースは高さ約30センチのの束で埋め尽くされた。 部屋の真ん中にいる僕の足元は見えない。の束と束の間にかろうじて足を突っ込んでいるからだ。足に泥は付着しないが、ぬかるみに膝下をずぶずぶ突っ込んでいるようなものだ。部屋の中を移動するにはの束から足を引き抜いて、の束を踏み台にするか、つま先がやっと入るかどうかのすき間に無理矢理足を突っ込むしかない。 不安のはじまり 床がで埋まっているというのに不思議と焦ってはおらず、床が抜けるというケースはまったく想像していなかった。むしろ運び終えたことに安堵していて、時間をかければ何とか片付くだろ、と呑気に考えていた。 運搬を手伝ってくれた便利屋スタッフが帰りの車中

  • 電子書籍にDRMは本当に有効か?

    においては、KindleiPadを「黒船」に見立てる言説が多いですが、現在の出版業界をかつての音楽業界とのアナロジーで語る見方もよく見かけます。つまり、iPodとiTunes Music Storeが音楽産業において果たした役割を、iPad(iBook)やKindle電子書籍市場の立ち上がりにおいて担うというわけです。 当然ながらその見方には新しい市場の開拓への期待だけでなく不安も多分に含まれますが、その不安のひとつに音楽業界に大きなダメージを与えたファイル共有などの海賊行為の歴史が、電子書籍においても繰り返されるのではないかという懸念があります。 今年の元旦に公開されたCNN.comの記事はタイトルからしてその懸念をストレートに表現しています。記事の中で、『リザベーション・ブルース』などの邦訳がある小説家、詩人のシャーマン・アレクシーは、「自分がスティーブン・キングやジェイムズ・

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  • 電子書籍が死んだなら

    を買ったとき、そのが死ぬことについて考える人はあまりいない。盗まれたり火事にあったり、あるいは誰かにあげたり売ったりしなければ、はいつまでもあなたの下で生き続ける。日は総じて品質が高いので、多少折れ曲がり、汚れ、黄ばんでも、読むことに支障はないだろう。それはが絶版になろうと、出版社が倒産しようと変わらない。 電子書籍は違う。電子書籍は突然死ぬ。つまり、読者の意図せぬ形で読めなくなる。実際、これまでにいくつもの電子書籍サービスが終了となり、私たちの電子書籍が読めなくなった。これは控え目に言っても、電子書籍の弱点である。読者は電子書籍の死にどう備えるべきだろうか。そして電子書籍ビジネスは死とどう向き合うべきか。 さまざまな死のかたち ・ストアの死 お気に入りの書店が閉店になったら、他の書店を探さなければいけない(ジュンク堂新宿店……)。一方、電子書籍ストアが閉店した場合は、他のス

  • 電子書籍の「探しにくさ」について

    紙版が100万部を突破、12のストアでほぼ同時発売された電子書籍版も空前の売り上げを記録した『スティーブ・ジョブズⅠ・Ⅱ』(講談社)。同書は内容のすばらしさもさることながら、「紙でも、電子でも」買える環境を新刊刊行と同時に広範に提供した初の書籍としても、後世に語り継がれるものになりそうだ。 だがそのことは同時に、従来の電子書籍の世界からは見えなかった課題も、あぶりだすことになった。紙と電子の書籍を横断検索できる「ブック・アサヒ・コム」の運営に携わる経験から、また発売日に複数の電子書籍ストアで同書を購入した個人的体験から、現段階でわかっていることを報告したい。 中心的なテーマは電子書籍の「探しにくさ」である。 電子書籍版『スティーブ・ジョブズ』の例から考える 発売前後の経緯を簡単に振り返ってみよう。各種報道によると、講談社は同書を当初2011年11月に発売する予定だったが、10月5日のジョブ

  • 楽天、kobo買収の本当の意味

    楽天がkobo買収というニュースにはさすがに驚いた。驚いた後で、「なるほど、こりゃすごい良い買い物をしましたな」と感心するとともに、まだ電子書籍のガジェットがどうのこうのという日での取り上げられ方に脱力。なんとか気を取り直してこのコラム書いてます。 日ではアマゾンが和書を売るオンライン書店としてだけでなく、日用品ならなんでも扱う外資系のオンラインリテーラーとして頑張っているから知名度も高いせいか、まだキンドルのサービスが始まってもいないうちから、黒船が、と話題になることも多いのはわかる。 しかし、アメリカではアマゾンがEブックもEコマースもすべてを牛耳っているわけではないので、機会あるごとにバーンズ&ノーブルのNOOK(ヌック)やソニーのReader、グーグルのeBookstoreやkoboもそれぞれの強みを活かしながらそれなりのプレーヤーになっていることを伝えてきたつもりなのだが

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