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ブックマーク / cruel.hatenablog.com (111)

  • ラフィ『カストロ』:ほぼ唯一のまともな意味での伝記。視点も批判的だが明確で最新。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary ラフィ『カストロ』(原書房、2017) は、2021年時点で日で出ている最新のカストロ伝。他の伝記が公式プロパガンダの羅列にとどまるのに対し、カストロに対するきわめて批判的な視点を元に、一般人がカストロの生涯を見て疑問に思う、革命への参入動機、少人数なのになぜ勝利できたのか、その後もなぜ権力が続いたか、ソ連の工作の影響などについて、明解な視点と説得力ある記述を行っている。 米ソ関係とその中のキューバ の位置づけ、という視点しかない他の伝記に比べ、南米におけるコミンテルンのオルグ活動、兄弟の戦略的な役割分担、政権を取ってからの壮絶な粛清と政敵弾圧の記述は圧巻。また文化的弾圧、人間関係、政策評価など他の伝記で無視されている内容にも、詳細な分析が行われる。 批判的なその論旨に賛成だろうと反対だろうと、議論の基盤として使える情報と論理があり、読者が自分の立ち位

    ラフィ『カストロ』:ほぼ唯一のまともな意味での伝記。視点も批判的だが明確で最新。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • diffとしての表現、あるいはほぼあらゆる (人間的な) 価値は、逸脱である - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary 多くのものはいまや、価値が来の機能ではなく、それ以外の来の機能との差分/diffに宿るようになっている。酒はもともとアルコールの酩酊感のためのものだが、いまやアルコール以外の不純物がお酒の味の主役になっている。事は栄養摂取が来の機能だが、グルメ料理はそれを離れ、単なる舌や感覚への刺激だけを重視するようになっている。 今後、そうした部分が増えるのではないか。車もバイクも、「味わい」とされるのはニュートラルな移動機能から逸脱した歪み。いずれ、そうした部分だけソフトウェアなどで再現されてそれだけが分離されて取引され、その土台となるハード/来の機能部分はコモディティ化してどんどん低価格化する世界がやってくるのではないか? ジャクソン・ポロックなどある種の芸術は、いちはやくそうした diff だけの世界を予見しているようでもある。 かなり前から考えている

    diffとしての表現、あるいはほぼあらゆる (人間的な) 価値は、逸脱である - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • The Economist:「クソな仕事 (ブルシット・ジョブ)」はクソ理論 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary デヴィッド・グレーバーは、いまの資主義を批判するので人気があるが、最近の労働が実は無意味なものと化し、そこに従事している人びとが虚無と疎外感にとらわれているという『ブルシット・ジョブ』(2018) は、実際の人びとの労働意識を調べて見ると、まったく実態に即していない、ただの思いこみでしかない。それを述べたThe Economist記事を勝手に翻訳した。 デヴィッド・グレーバーは何やら一部の人にはえらく人気があって、お決まりのサヨク議論を何やらそれっぽい意匠で語ってみせるから、というのが普通の解釈だけれど、正直いってそれ以上のものだとは思わない。 で、彼のブルシット・ジョブ。ほとんどの人は読んでなくて、これが非正規のウーバー配達員とかそういう仕事のことだとおもっているんだけれど、実はちがう。オリンピック大臣の丸川珠代みたいな、何の技能もなく意味もないお飾

    The Economist:「クソな仕事 (ブルシット・ジョブ)」はクソ理論 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • キューバの経済 part 4: 社会主義/共産主義経済の全体像 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    1. キューバ再び:経済危機のさなか さて久々にキューバにきているのだけれど、キューバはいますごいことになっている。まず、アメリカの制裁がどんどん厳しくなり、各種の船はキューバに寄っただけで嫌がらせされ、キューバへのフライトもどんどん潰された。おかげで観光客は激減。FDIもやたらに支障をきたす状態。料やガソリンの不足はとんでもない状況だ。 さらにコロナ。2020年夏に、一時抑え込んで、われコロナに勝利せり、と叫んだらすぐに第二波がはじまり、さらに今年に入って爆発。人口一千万強のキューバで、一日千人規模……だったのが6月にさらに爆発して一日三千人の新規患者数だ。おかげでレストランはテイクアウトのみ。夜8時から朝5時まで外出禁止。 さらにトランプがイタチの最後っ屁で、今年一月にキューバをテロ支援国認定してしまったので、特に銀行のドル送金ルートがほぼ完全に断たれてしまった。キューバ相手のドル取

    キューバの経済 part 4: 社会主義/共産主義経済の全体像 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    bhikkhu
    bhikkhu 2021/07/04
    おもしろーい
  • ナオミ・ウルフ (博士) の……凋落なのか元からそうだったのか…… - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary 2021年10月に、ナオミ・ウルフのツイッターアカウントが垢バンをくらった。コロナ陰謀論とワクチン否定論の最も低級な代物をバラマキ続けたせいだが、それ以前からナオミ・ウルフはどんどんおかしくなっていた。 もともと主著『美の陰謀』でも、ルッキズムからくる拒症による死者数を、累計を毎年の数字だと思って数百倍にしてしまっており、いい加減さは有名だった。博士論文をもとにした近著Outrages!では、その中心にあった基概念である death recordedが、単なる形式上の記述なのを知らず当に死刑だと思って論を構築していたことが判明し、面目が丸つぶれ。その後、5G陰謀論、コロナ陰謀論、コロナワクチン陰謀論に次々にはまっていき、もはや信用を完全に失ってしまった。 2021年6月に、ナオミ・ウルフのツイッターアカウントが停止をくらった。 いやー、ついにそこま

    ナオミ・ウルフ (博士) の……凋落なのか元からそうだったのか…… - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    bhikkhu
    bhikkhu 2021/06/07
    松明持って火をつけて回る特攻隊長が重宝されるのは界隈ではよく見られる光景やな。
  • ケインズ『人物評伝』全訳おわった。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    epub版ケインズ『人物評伝』表紙。 年明けてからケインズ『人物評伝』を訳し始めて、月の内になんとか終わりました。 ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝』pdf 2.7MB ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝』epub 1.4MB epubは、pandocで機械的に変換しただけ。現在は、もとの翻訳は半分くらいをlatexで書き、残り半分はmarkdownで書いて、pandocでlatexにして、そのlatexをもとにepubにしている。記事毎の改ページとか、きちんとできていないし、まだepubとして改良の余地はたくさんあると思う。今後これは改良しましょう。 (ふーむ、epubってxhtmlのかたまりなのか……ちょっとそれを知っていじってみました。表紙も一応くっつけておきました。このままアマゾンにでも出そうかね。xhtmlのかたまりということは、markdownを使う必然性はあまりなく

    ケインズ『人物評伝』全訳おわった。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ピケティ『21世紀の資本』: r>g は格差の必要 or 十分条件か? - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    21世紀の資 作者:トマ・ピケティ発売日: 2015/04/27メディア: Kindle版 新年仕事始め前の小ネタ。ツイッターでこんなのみかけたのよ。 このツイ主は、浅田論文を読んでおくことでどういう知見を得るべきなのか、ここで採りあげているネット番組の問題提起に対してそれがどう関係してくるのかは明記していない。けれど、文脈から判断して、これは日で r>g が顕著になってきたことなんか重視すべきじゃない、それで格差なんか増えない、こんなんで騒ぐやつは煽りだ、と言いたいのだろうとぼくは判断する。 さて、この人がツイートないで言及している論文はこれだ。 core.ac.uk ちょっと待った、これ、COREか! ワタクシが座興で訳していたら「金払わないと訳しちゃダメ」と言ってそれを潰しやがった……まあいいや。勝手にやってたことだから仕方ないんだけど。が、閑話休題。 (なんか別物らしい。とばっ

    ピケティ『21世紀の資本』: r>g は格差の必要 or 十分条件か? - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • コロナなんかどうでもいいから石岡瑛子展に行きなさい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary この展覧会を前にしてどうでもよくないと思う人は、豚に真珠もいいとこだから観に行かないほうがいいよ。 はじめに 先日、無料券をもらったので石岡瑛子展にでかけてきたのです。 www.mot-art-museum.jp ぼくは石岡瑛子は昔からとても好き、というか崇めていて、『風姿花伝』も持っているし、『私デザイン』も持っていて、何度も見ている。 石岡瑛子風姿花伝―Eiko by Eiko 作者:石岡 瑛子求竜堂Amazon 私 デザイン 作者:石岡 瑛子講談社Amazon だから別に今回の展覧会で何か新しい発見があるとは特に思っていなかった。いろんな衣装の実物があるというのは聞いていて、それは楽しみだったかな。でもまあ、知っていることのおさらいだろうと思っていた。 ちがった。すげえ。みなさんも是非行きなさい。 いまなお衝撃力を保つバブル期広告作品 まず入ると、

    コロナなんかどうでもいいから石岡瑛子展に行きなさい。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • 偉大なる首領スターリン閣下のありがたきインタビューでも読み給え。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    最近さまざまなメディアにおける人民諸君の発言を見るにつけ、であるな、多くの者が堕落し、あるべき革命精神を忘れ、軽視し、捨て去っているように見えるのだよ。特にへっぽこリベラルえせ知識人どもよ。そうした反革命分子どもにも、更正の機会を与えてやろうではないか。偉大なる首領、我らが指導者スターリン閣下のありがたきインタビューを読んで、あらためて社会における己の卑しき役割を再認識したまえ。 H・G・ウェルズによるスターリンのインタビュー、1934年7月 pdfが嫌な人は、この下に全文貼り付けてあるのでこのまま読み進めたまえ。 というわけで、H・G・ウェルズによるスターリンのインタビュー。大恐慌真っ最中の1934年にソ連を訪れたイギリスの大知識人たるウェルズは、もう資主義は終わりだ、社会主義の時代がすぐにやってくると、当時の (そして今の) 軽薄なリベラル知識人ぶりを全開にしてスターリンにインタビュ

    偉大なる首領スターリン閣下のありがたきインタビューでも読み給え。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    bhikkhu
    bhikkhu 2020/10/14
    資本家と労働者階級の宿命的な対立という世界観にはわりと首肯出来るものの所詮はホモサピの集合体でしかない党と共産主義へのこの絶対的な信仰は我こそ労働者階級そのものだという自負が支えていたのかもね。
  • レッシグ新刊で知ったアメリカ政治二極化の力学 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    久しぶりにレッシグの翻訳をしているんだけれど、なかなかおもしろい(部分もある)。 かつてのインターネット法や著作権法からレッシグの関心は大きく逸れて、ここしばらくのレッシグのは、アメリカの選挙献金制度の改革がテーマになっていた。何度か、翻訳の打診もきたし相談も受けたんだけれど、話があまりにアメリカの選挙制度に偏りすぎで、翻訳しても日人が関心持ちようがないと判断したので、申し訳ないんだがずっと見送りを奨めていた。 さらにその後、レッシグ自身が大統領選に出馬とかして、人的には真面目なんだろうけれど、端から見るとスタンドプレーにしか思えないことをやったりしたため、言っては悪いんだが、キワモノ的な雰囲気が高まっていたこともあって、もう最近のやつは読んでもいなかった。 それが、まあいろいろあって最新作を訳すことになって手をつけ始めている。おおむね関心は変わっておらず、アメリカ政治の根的な改革

    レッシグ新刊で知ったアメリカ政治二極化の力学 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    bhikkhu
    bhikkhu 2020/09/28
    “極端な連中ばかり真面目に投票するから極端な主張と行動をしたほうが当選しやすい”政党が直接的な利害関係者の意向に左右されるのは本邦でもよく見られるような。
  • ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』(1982) 改訳終わった。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    はい、コロナ戒厳令開始前に、サイモン『意思決定と合理性』の改訳を始めました。 cruel.hatenablog.com で、終わった。まあ読みなさい。 ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』(1982) pdf版 ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』(1982) epub版 右クリックでダウンロード 読者のみんなは、ぼくに深く感謝するがよいのだ。これはそれだけの価値がある、すごいだからだ。 この短いに収められた叡智のすごさは、ちょっと比類がない。第1章は、彼の限定合理性理論のまとめであると同時に、自分でその限界をバシバシ指摘したおっかない部分。2章は、進化論について一般人の知るべき事を、とんでもなく高度な話まで含めて網羅している。第3章では、1982年の時点で地球温暖化の話にすでに目配りしてあるのに驚くし、また最後に出てくる各種経済学派のちがいは唯一、期待形成のあ

    ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』(1982) 改訳終わった。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • スノーデン自伝 訳者ボツ解説 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    しばらく前、といってもコロナ前だからはるか昔のように思えてしまうけれど、かのエドワード・スノーデンの自伝を訳したのでした。NSAに気がつかれないよう、原文はタイプ原稿コピー、著者名も偽名、これについてネットで絶対話をするなという条件つきで、しかも少し急かされたこともあり、なかなかおもしろうございました。 スノーデン 独白: 消せない記録 作者:エドワード・スノーデン発売日: 2019/11/30メディア: 単行 さて、このには訳者解説はない。でも実は、事前に有識者に送ったレビュー用の見版には、訳者解説があった。そして、出版社が販促用に作ったページにも、一時は訳者の解説が全文掲載されていた。 www.kawade.co.jp それがなぜ上のページから削除され、実際のからも訳者解説が消えたのかというと……スノーデン側から物言いがついて、なんでもあの訳者解説はスノーデンに対して disr

    スノーデン自伝 訳者ボツ解説 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • Anderson, "Che Guevara":壮絶な調査に基づく空前絶後のフェアなゲバラ伝 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary すさまじく分厚いゲバラの決定版伝記。綿密で詳細な調査とインタビューはとにかく圧巻。キューバで長年暮らして関係者の資料を大量に閲覧、ゲバラ懐柔役だったはずの老練なソ連外交官から、恋する乙女まがいの赤面するようなコメントをモスクワで引き出し、最後の部隊の生き残りにスウェーデンまで出かけてヒアリング。すごい! 思想形成や、戦略的な評価といった大局的な視点はいま一つ薄い。だが、その調査が浮き彫りにする、ゲバラの人格的な信じがたいほどの魅力、およびそのとんでもない滅私奉公の独善ぶりは、これまでの伝記などで見られる、とても単純かつ純粋な理想主義者というイメージにかなり修正を迫るものではある。 そして書はそのすさまじい調査により、ゲバラの最期についての決定的な証言を入手し、そのおかげで謎だったゲバラの埋葬場所まで明らかになり、ゲバラ遺体のキューバ帰還にまで貢献した—

    Anderson, "Che Guevara":壮絶な調査に基づく空前絶後のフェアなゲバラ伝 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    bhikkhu
    bhikkhu 2020/06/04
    革命家はモテるの典型やな。セックスに飢えたジジイが反権力に群がる理由ではあるが。
  • 岩田健太郎『主体性は教えられるか』:主張はわかるが無内容。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    主体性は教えられるか (筑摩選書) 作者:岩田 健太郎発売日: 2012/03/01メディア: 単行 題名見て、おもしろそうだと思ったんだが、大はずれ。 著者はお医者さんで、最近の連中は主体性がない、と嘆いている。自分で治療法を決められず、先例にならうしか能がない、と、んでもって、なぜそんな嘆かわしいことになったかというと、効率第一主義が悪いんだって。主体性を持っていろいろ考え始めると、時間がかかって効率が悪くなるから。 で、ひいては、効率をはかるための評価がよくない、と言い出すんだが、この言い分がげんなり。 評価を否定するものではない。が、評価はあんなこともありこんな悪いこともありこんな弊害もありコストもかかり結果もはっきりせず完璧ではなくなじまない面もあり……でももちろん評価を否定するものではない。ただ評価にはこんな欠点もありあんなエピソードもありこんなこともあってうまくいかず、いや

    岩田健太郎『主体性は教えられるか』:主張はわかるが無内容。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    bhikkhu
    bhikkhu 2020/04/28
    おやおや
  • Ocean Blue, または安定と成長について - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    YouTubeに逃避をしていたら、なんとOcean Blueが今年新アルバムを出していたと知って驚愕。まだ存在していたのか! 昔のよしみで買って聞きました。 Kings and Queens /.. アーティスト:Ocean Blue出版社/メーカー: Korda発売日: 2019/06/28メディア: CD Ocean Blueは、ペンシルベニアのハーシーチョコ城下町出身のオルタナロックバンド。前世紀/全盛期MTVで、ちょうどニルヴァーナが人気を確立してカート・コバーンが方向性に苦しんで、二枚目出して自殺しちゃった頃にそこそこ流行っていた。メロディアスなオルタナカレッジロックで、奇をてらわず非常に優等生的で、常に中堅的な位置づけでドーンと一世を風靡したことはなく、ロックフェスとかでも大トリを張る存在ではないけれど、その二つ前くらいに登場してくれたらすごくうれしい感じ。当時は、いろんなバン

    Ocean Blue, または安定と成長について - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    bhikkhu
    bhikkhu 2020/01/05
    “子供が前の保育園の同級生と集まって遊んでいたら”あれ?お子さんいたんか?/人間て基本成長はせんよな。
  • 格差の拡大は本当だろうか?——経済学者、格差の数字を見直す(The Economist より) - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    訳者口上:秋にピケティの新著が出たところで、The Economistの11/30号に格差についての議論を見直す研究についての話が出ていた。おもしろかったので勝手に翻訳。トップ層がすさまじく豊かになっているという見立ては、実はそんなに正しくないのではないか、という研究がどんどん出てきたというお話。ただし、どれも金持ちの豊かさ増大がピケティらの言うほどはすごくないかも、というだけで、金持ちが豊かになっていること自体を否定するものではないので念のため。なお、途中の見出しはオリジナル通りで、全部ある有名な曲の歌詞から。(山形浩生) www.economist.com 2011年にニューヨークのズコッティ公園での抗議デモに何千人もが集結する10年以上前、フランスのあまり有名でない経済学者が腰を据えて、所得格差についての新しい見方を扱った論文を書き始めた。「我々の研究の焦点は、トップ10%、トップ1

    格差の拡大は本当だろうか?——経済学者、格差の数字を見直す(The Economist より) - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • トルコ大統領が不敬にも捨てたという、トランプ大統領閣下のありがたきお手紙を植民地の下等民どもも味わってみたまえ。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    もう多くの人が言っていることだけれど、ぼくは最近、フェイクニュースと現実のニュースの区別がつかなくなっていて、冗談ぬきで途方にくれている。このニュースが最初に出てきたときもそうだった。 www.asahi.com この手紙の実物が最初にでまわったとき、ぼくは絶対これはインチキだろうと思ったんだけど……ちがった。朝日新聞のこんな機械翻訳ではその真の味わいがかけらもわからないので、その文体も含め訳してあげました。 トランプ大統領閣下のありがたきお手紙 (ウソだと思う人(思うよねえ)、現物はこちら リークしたのがフォックスニュースだし、ホワイトハウスも認めてるそうです) ごめんね、ぼくはこういう格調高い文章の翻訳になれてないので、ちょっとまちがってるところもあるかもしれないけど…… 山形がまた超訳してるんだろうと思う人もいるかもしれないけど、ほぼこの通りです。これを口述筆記させられた人はその場で

    トルコ大統領が不敬にも捨てたという、トランプ大統領閣下のありがたきお手紙を植民地の下等民どもも味わってみたまえ。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    bhikkhu
    bhikkhu 2019/10/22
    クソワロタ
  • ストーレンハーグ『エレクトリック・ステイト』拙訳についての論難は不当だと思うのです。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary シモン・ストーレンハーグ『エレクトリック・ステイト』の山形の翻訳について、アマゾンレビューで悪口が出ているけれど、山形自身は不当だと思う。その主張と山形の言い分は以下の通り。 話者が二人いるのを、一人だと誤解している! → まさか。一人称を見なさい。訳し分けてます。原文でもその差は、内容で判断するしかないんです。 それをごまかすため重要な一文をわざとぬかした! → ぬかしてません。原著にはバージョンが二つあります。その差です。 そのもう一人の話者は絵に出てくる男なのだ!→ その解釈は明らかにまちがっています。山形が正しいかどうかは、続編 and/or 映画をお楽しみに! 2刷りから、削除された文章がこっそり追加されているのに他の部分がそのままだ!→ 文章の追加は原著者の意向を確認した結果です。他の部分はまちがっていないので修正の必要がないのです。 The

    ストーレンハーグ『エレクトリック・ステイト』拙訳についての論難は不当だと思うのです。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    bhikkhu
    bhikkhu 2019/07/29
    買ったやでー
  • お嬢さんは中東の石油相の遺産をもらえるそうです。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    まったくどうでもいい話だけれど、近くのカフェで御禁制品のファーウェイMatebook Xでかっこよく仕事をこなしていたところ、隣でそこそこ妙齢の女子が二人ダベっている。その一人曰く: 「なんか変な英語のメールがきたのよー、中東からでぇ、なんか億万長者の遺産があるので、その遺族を探して口座から遺産を出すのを手伝ってくれって」 おー、最近また少し増えてきたよねー、その手のメール、と思いつつ聞いていると、相手方は「なんかあやしーよねー、どうしてそんなの来たの-」とお返事。 最初の女子は「そーなのよー、なんか変でしょー、そんな話あり得ないよねー、その遺産の人の名前とか聞いたことないし、あたしその人と関係ないしー」、と非常にまっとうな疑念を表明していて、あー、ネットリテラシー教育も少しは浸透しているのねー、と感心して聞いていた。そのまま彼女は、いろいろ怪しいところを並べて、いちいちごもっとも。相手も

    お嬢さんは中東の石油相の遺産をもらえるそうです。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • キューバの経済 番外編: ノマドの夢と現実 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    キューバの話は書きかけがいくつかあるんだけれど、なんとなくまとめるところでモチベーションが落ちて放置してある。一つの理由は、コルナイ・ヤーノシュ『不足の政治経済学』を読んだら、ぼくが考えていたような話がすでにかなりきちんと考察されていて、ちょっと今さらかなあと思ってしまったことがある。コルナイ・ヤーノシュ*1、おもしろいから読んでねー。 「不足」の政治経済学 (1984年) (岩波現代選書〈90〉) 作者:コルナイ・ヤーノシュメディア: 単行 が、コルナイ・ヤーノシュとこの山形ごときを比べること自体不敬であるし、下々の俗人の考えとして今後少しずつまとめていこうとは思う。が、そういう気が向く前に、また余談となる。 モンゴルで、いろいろ常識が覆された話はすでにやったけれど、もう一つ大きかったのは、ノマド/遊牧民というものに対する理解が完全に変わったことだった。 ノマドとは何か? ノマド=遊牧

    キューバの経済 番外編: ノマドの夢と現実 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    bhikkhu
    bhikkhu 2019/07/15
    農業と緑の革命に万歳やな