解説から読む 文庫 - 外国文学 本書をより美味しく召し上がっていただくために――2016年6月映画公開の『帰ってきたヒトラー』、原作文庫解説を公開。 マライ・メントライン 2016.05.02 『帰ってきたヒトラー』(上下) ティムール・ヴェルメシュ 森内薫訳 【解説】マライ・メントライン 本書『帰ってきたヒトラー』は、2012年にドイツで発売された直後から大きな反響を呼び、即座に大ベストセラーとなった。現代によみがえったヒトラーの「魅力的側面」を描くというのは、ドイツの文化的作法から見てあまりに大胆すぎる試みだ。その騒ぎを知ったときの私の先入観は、おおよそ以下のようなものだった。 ●まあたぶん、一発アイディア勝負のキワモノ小説だろう。 ●ヒトラーを戯画的に描き、歴史原理を単純化して描いているのだろう。 ●どうせ、最後はヒトラーが成敗されるお約束的な展開だろう。 すばらしいことに、これら