議論のヒクソン・グレイシーみたいな人間がいた。彼は議論の600戦無敗だった。生まれてこの方、ただの一度も議論に負けたことがなかった。 彼の伝説の始まりは3歳の頃にまでさかのぼる。最初の相手は父親だった。彼の父は、彼の子供らしい我が儘に腹を立て、説教をしようと試みた。ところが、あろうことか彼はその父を論破してしまった。激高した父は、彼のことをぶん殴った。そこから、彼の不敗神話は始まった。 小学校に上がると、近寄る者皆言い負かすようになった。彼は、男女を問わず言い負かしていった。町一番のおしゃまさんと評判の、口の達者さには自信のあった加代子ちゃん(仮名)でさえ、彼の前にはひとたまりもなかった。自信を喪失した彼女は、いつしか慎み深い女性へと成長した。それを見咎めた彼の担任(女性)は、皆ともう少し仲良くするよう注意を促した。ところが、その言説に潜んでいた欺瞞をたちどころに見抜いた彼は、なんと女教師