『本はどのように消えてゆくのか』(1996年 晶文社)より はじめに はたして紙と活字の本はなくなるのか。おそらくなくなるだろう。 ただし私は、いずれは日本語表記から漢字がなくなるだろう、と本気で考えているような人間でもある。いつか、われわれの書く文章から漢字が一つのこらず消えてなくなる日がやってくる。そのころまでには紙と活字の本だって自然消滅しているにちがいない。 それまで百年、二百年、いや三百年か。いずれにせよ遠いさきの話だ。マルチメディアや光ファイバー・ネットワークによって、あすにも紙と活字の本がなくなるかもしれないといった危機意識の盛りあげ方は、ちょっと古いのではないか。そんなにおどかさないでほしい。 遠い将来、もし本がなくなるとしたら、それはどのようにしてなくなるのだろう。紙と活字の本はどんな段階をふんで消滅の時をむかえるのか。 それを考えるには、まず「本とはなにか?」を定義して