野兎病(tularemia)は野兎病菌(Francisella tularensis )による急性熱性疾患で、代表的な動物由来感染症の一つである。自然界において本菌はマダニ類などの吸血性節足動物を介して、主にノウサギや齧歯類などの野生動物の間で維持されており、これらの感染動物から直接あるいは間接的にヒトが感染する。近年、わが国において野兎病は非常に稀な感染症であるが、本菌は今日でも国内の野生動物間で維持されていると考えられること、また、ヒトが海外の発生地で感染したり、本菌が生物テロに使用される可能性のある病原体としてリストアップされるなど、留意すべき感染症の一つである。 疫 学 発生状況:野兎病は北米、北アジアからヨーロッパに至る、ほぼ北緯30度以北の北半球に広く発生している(図1)。米国やスウェーデンなどの海外の汚染地域では毎年散発的に起っており、ときに流行を示すこともある。 日本で