東京都庭園美術館の展覧会「建築の記憶―写真と建築の近現代―」を心待ちにしていたので、初日の今日、さっそく白金に足を運んだ。庭園美術館、つまり旧朝香宮邸を訪れるのは三度目か四度目になるだろう。 展覧会は、明治維新直後、記録のため撮された江戸城や熊本城など城郭写真から、建築設計に資するため建築家自身によって撮影された建築写真、日本の近代建築のなかでも異彩を放つ建築物の写真や模型などなど、すこぶる刺激的なものだった。 維新直後の熊本城はけっこうボロボロだ。ささら子下見で統一された宇土櫓はまるで廃屋のようで、何層目かの窓にしつらえられていたとおぼしい戸板が外れ、瓦屋根の上に落ちそのままになっている様子が侘びしい。風で吹き飛ばされ、隣の家の屋根の上に落ちて、取りたくとも取れなくなった洗濯物のよう。 ここに展示されている写真は、みな一流の写真家による作品であり、被写体となっている建築物は一流の建築家に