「司書は『物知り』ではありません。何故だかわかりますか?」 少年はいぶかしむ。司書はその顔を見て、続きを話す。 「もし私たちが『物知り』なら、あなたは質問して、答えをもらい、そして満足しておしまいでしょう。 しかし司書は答えを言いません。 いくつかの『扉』を示し、あなたを送り出すだけです。捜索はあなたがやらなくてはなりません」 「先生に知らないことなんてないと思ってた」 と少年は言う。 「『先生』はやめてください」 と司書は応じる。いつものやりとり。 「何をやってるんですか?」 少年は尋ねる。司書は少年に応じながらも、手を止めていなかった。 「本の修復です。専門の係もあるのですが、学んだ技はこうして時々使わないといけません」 「世界大百科事典の索引の巻!? ぼくが壊したやつ?」 「壊すほどたくさん引いた人を何人も知りませんが、百科事典は索引から引くのが鉄則です。特に平凡社の世界大百科事典は