オープン・イノベーションの進展とともに新分野探求を目的とした共同研究の重要性が増しており、研究成果の無償公開は潜在的な共同研究パートナーへ向けた「シグナリング」となる可能性がある。よって、他社等との連携が重要な技術分野において、研究成果無償公開の目的も従来からの「知的財産の防衛」から変化した可能性がある。本論文は、オープン・イノベーションにおける研究成果無償公開の役割を、IBMの事例から分析する。具体的には、IBMが複数企業とのオープンな共同研究を多く行ってきた情報通信分野における無償公開の役割をIBMの特許の論文引用データから分析し、防衛目的の研究成果無償公開の有無を調べる。分析結果は、IBMが情報通信分野の研究開発においても防衛目的で無償公開を行い、さらに、国際戦略上の重要性が高いと思われる技術については特許出願前に無償公開を行わない傾向があることを示す。オープン・イノベーションにおい