鶴見俊輔は晩年のほぼ20年間、「もうろく帖」と名づけた手控えのノートをつけていた。合わせて23冊――。 興味はありましたよ。でも私的なノートだからね、とうぶん読む機会はあるまいと、そう考えていたら、思いがけず、京都の「SURE」という編集グループがその1冊目を活字化してくれ、おかげで意外に早く読むことができた。 SUREといってもなじみのない人が多いと思うので、ざっと紹介しておくと、作家の黒川創、画家でエッセイストの北沢街子(妹)、編集者で、やはりエッセイストの瀧口夕美(妻)の3人がいとなむ家族出版社。それがSUREです。2002年に活動を開始し、遠い近いの差はあれ、幾人もの知人を仕事場に招いて、おもに座談のかたちで、ちょっと薄めの本をだしつづけてきた。 で、そのSUREが発足8年後刊行したのが、その間、1992年から2000年にかけてポツポツと書きつがれた「もうろく帖」の第1冊だったので
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