いろはの「い」から ――『明治の表象空間』は、A5判・七〇〇ページ超と、松浦さんの中で最も長大な本となりました。「新潮」連載は二〇〇六―一〇年の五年間(全五十回)でしたが、構想はいつごろからあったのでしょうか。 松浦 一九九五年に『エッフェル塔試論』と『折口信夫論』を出しました。別々の出版社から刊行した二冊なのですが、たしか見本が出来てくるのがほんの一日違いだったのを覚えています。意図したわけではなくまったくの偶然ですが、ほぼ完全な同時刊行ということになりました。この二冊は、一方は十九世紀フランス文化史、他方は日本の歌人・民俗学者の言説分析と、まったく異なる主題を扱っています。両者を目の前に置いて、さて、ではこの二つの異質な仕事の間にどういうかたちで橋を架けたらいいのか、といったことは当然、考えますよね。そういうこともこの本の構想の端緒にあったような気がします。 それから、それとはちょっと
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