自由民権運動――〈デモクラシー〉の夢と挫折 (岩波新書) 作者: 松沢裕作 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2016/06/22 メディア: 新書 この商品を含むブログ (8件) を見る これは大変面白い本だった。字面だけを見れば民主主義を日本に根付かせるための運動と思える自由民権運動も、その実態を見てみると相当にカオスで、ときに時代錯誤的ですらある。たとえば本書の冒頭で取り上げられている秋田立志会は、なんと封建制社会の復活や徴兵制の廃止を唱え、会員へ永世禄を与え、士族とすることをアピールしている。これのどこが「自由民権運動」なのかと驚くような事例だ。 しかし、自由民権運動の担い手の来歴を見ていくと、運動がこのようなものになっていく理由もみえてくる。民権運動家として著名な板垣退助と河野広中は、それぞれ土佐藩と三春藩の出身で戊辰戦争で活躍した人物だが、かれらは明治維新後の社会において