電子書籍が普及しても、「本を愛でる」という表現がしっくりくるのは、やっぱり紙の本だろう。装幀などのデザイン、手に取ったときのあたたかみ、ページをめくるときの音や質感、書体やレイアウト。「モノとしての本」にこだわりぬいた本づくりは、出版を生業とする人ならきっと誰もがあこがれる。が、コスト云々という大人の事情で、実現できないことが多い……一般論的に。 しかし、そうした「こだわり」を貫き、丁寧な本づくりを続ける出版社がある。 夏葉社。1976年生まれの島田潤一郎さんが、5年前に一人で立ち上げた。埋もれていた名著の復刊や、『本屋図鑑』『冬の本』などで知られる。内容はもちろんのこと、その魅力的な造本には、新刊が出るたびに脱帽させられてきた。 いったいどんな人なんだろう?と思っていたら、その島田さんが本を出したではないか。本書には、なぜ、どのように、一人で出版社をつくり、本を出してきたのかが綴られてい