■詩の源、自分でもびっくり 前衛的な詩活動で日本芸術院会員、文化功労者。そんな肩書とパフォーマンスのおちゃめさに、すごいギャップがある詩人の「自伝」。 聞き手と編集者の3人で1年近く対話を重ね、語りを書き起こしては、手を加えた。「楽しい作業でした」という。東京から和歌山に疎開した幼年期以来の過去をたどり、記憶を呼び起こす。「年も年だし、本気になり、正直に、慎重に」……ところが、記憶は言葉になる時に微妙にずれて揺らぎ、それを意識する精神の働きでまたずれる。記憶と言葉の揺らぎの奥を探る足取りが、異様に面白い。 新しく想起されることもあった。例えば初期の詩「空からぶらさがる母親」。自分でマザコンの詩だと思っていたが、疎開先の和歌山で、米軍機が大量の銀紙を空一面にまいた光景が心に焼き付いて詩の源になっていたとわかり、「自分でもびっくり」。 「僕は戦争の非常時の子で『非常時性』が生命の一番奥深くにあ
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