かつて慰問雑誌というものが存在したことは知っていた。戦時中、前線で戦う兵士たちのために作られた娯楽雑誌である。だがそのグラビアが、現在のアイドル雑誌さながらのポートレートで埋め尽くされていたことは知らなかった。本書が主として取り上げる慰問雑誌『戦線文庫』に登場するのは、原節子、田中絹代、高峰三枝子、李香蘭といったスターたち。日中戦争下にあった1938年の創刊号のグラビアが紹介されているが、ロン
ISBN: 9784622079729 発売⽇: 2016/06/11 サイズ: 20cm/339,11p 遠読―〈世界文学システム〉への挑戦 [著]フランコ・モレッティ 世界中の文学作品全てに目を通すことができる人などいない。タイトルを把握するだけでも一生が終わってしまいかねない。 しかし、各人が手にとった本を精読し、きちんと情報を交換していけばすぐれた本を見つけだすことはできるはずだ。 本書のタイトル「遠読」は、その「精読」に対する単語である。半ば冗談でつくったという。精読が一冊一冊をていねいに読み込んでいくことを示すのに対し、遠読は個々の内容には踏み込まない、つまり読まないことを意味する。そのかわり、大量の本を扱ったり、登場人物たちのセリフの配置に注目したりする。いずれも、情報技術の発達によって実行可能となった読み方である。 統計的な見方は、人間の信念や意図を別方向から眺めることを可
老生 [著]賈平凹 食べる、働く、病む、性交する、排泄(はいせつ)する。迎合しとり残され、利を得てまた失う。加害者にも被害者にもなり、とにかくその地で生きつづけ死につづける。 秦嶺山脈の奥、神話と呪術が現代医療や科学技術と混然一体をなす村落で、無名の人々が紡ぐ現代中国史。そのとてつもなさに圧倒され、もう悟りをひらくしかないような気がしてくる。「実は生死は一(いつ)なのだ。人は大地から湧き出した気に相違ない」とあとがきで著者はいう。まさに。 こんな感慨がわくのは、各話の冒頭および中ほどに引用される古代中国の奇書『山海経(せんがいきょう)』の抜粋と、それにつづく問答によるところが大きい。小説本編はあらゆることを見聞きしてきた弔い師を主な語り手として、地を這(は)うがごとき人々の生を描く年代記、つまり徹頭徹尾人事なのだが、『山海経』はひたすらに地理。この山にこの川あり、土壌はこうで産する鉱物はこ
『宇宙探偵マグナス・リドルフ (ジャック・ヴァンス・トレジャリー)』 ヴァンス,ジャック,Vance,Jack,久志, 浅倉,昭伸, 酒井 国書刊行会 2,640円(税込) 商品を購入する Amazon HonyaClub HMV&BOOKS honto 新しいSFはつぎつぎと書かれていて先鋭的な話題作も生まれている。けれど古いSFもイイよねとエドモンド・ハミルトンやジャック・ウィリアムスンを読み返して、おおやっぱり面白いと喜んだりするのだけど、まあ古びているところはやっぱり古びている。それもコミの楽しさだ。しかし、奇跡的にまったく古びない作品があって、何が違うかというと、風化しようのない神話性(作品空間として完結するリアリティ)である。コードウェイナー・スミスが好例だ。そしてまた、ジャック・ヴァンスも。 『宇宙探偵マグナス・リドルフ』に収録された十篇の連作は、外形的には広義のスペースオペ
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