【リオデジャネイロ=天野健作】圧倒的な強さにスタンドを埋めた観客は総立ちになった。「泥臭く執念深くやる姿を見せたい」。柔道男子73キロ級を制した大野将平(24)は、リオデジャネイロに出発前にそう話していたが、むしろ華麗で豪快な柔道に観客は魅了された。 「弟には『よく頑張った。ご苦労さん』と声を掛けてあげたい」。共に柔道を習った兄の哲也さん(26)はリオのスタンドで満面の笑みを浮かべた。 大野は兄の影響で5歳から柔道を始める。「大きな人を投げ飛ばせるのが面白くて、柔道にはまった」。だが、小学生のときはすぐに泣く子だった。勝っても泣いた。 大野が入団していた松美柔道スポーツ少年団長の植木清治さん(65)は「強くなりたいとよく言っていた。彼はなんといっても心がある。負けん気だ。とにかく攻める子で、チャンスを身につける癖を持っていた」と語る。