図説 尻叩きの文化史 [著]ジャン・フェクサス 奇書である。先日、野村萬斎氏が演出した『サド侯爵夫人』(三島由紀夫原作)を観劇し、その余韻のなかで本書を手に取った。タイトルに「図説」と銘打たれているとおり、古今東西の尻叩きに関する図版が豊富で、それらを概観するだけでも、この本のぶっ飛び具合が伝わってくる。 著者は元弁護士で、「エル」や「フィガロ」といった女性誌のイラストレーターの仕事をこなし、かつては警察官でもあったという変わり種である。彼の著作の一つ『おなら大全』は、故・米原万里さんが以前書評を書いていたので覚えている。熱心な性の探求者で、しかもマニアックな性格を持ち合わせていることは、多くの図版の提供者に自身の名を挙げていることからもうかがえる。努めて上品かつ生真面目に分析しつつも、書き手の嗜好(しこう)や気持ちがページの随所に滲(にじ)み出しているのが面白い。そうした人間味が垣間見ら