職業外交官への愛情と外交制度分析の欠如と 【書評論文】 職業外交官への愛情と外交制度分析の欠如と ――細谷雄一『外交』 (有斐閣,2007 年)を読む――* 網 谷 龍 介 を肯定的に引用していることにも見て取れる。こ 1. はじめに 「国際化」が喧伝された時代からは既に遠く離 の旧外交の時代を支えたのが,職業外交官達で あった。時に粗雑な外務省批判が目立つ中,外交 官には固有の世界と行動の論理があり,そのこと が対外関係の安定をもたらしてきた時代があるこ とを,流麗な筆致で読者に印象付けているのは本 書のメリットであろう。 しかし,そこから一歩踏み出して, 「外交」の機 能とは何であり,そこで「外交官」が果たす役割 とは何なのかについての含意を引き出すべく,本 書の記述から分析的な考察を行おうとするとき, 本書には幾つかの難点があるといわざるを得ない。 以下ではこれ