美と官能とダンディズム。「序論」(抜粋)ウェブ公開 小倉康寛『ボードレールの自己演出――『悪の花』における女と彫刻と自意識』 2019.11.12 青年は愛する女を彫刻化することによって詩人になった―― 「近代人の成長の物語」を演出した詩人像を析出する画期的な新研究。 序論(抜粋) 小倉康寛 文学者が自伝的な作品で自らのこととして表現する精神性は一般に、その実人生を飛び越え、過剰に偉大なものとなる傾向がある。例えば、現実の作家は欲望にだらしがなかったのに、作品で崇高な愛を表現していることがある。本研究が論じようとするテーマを先取りして言えば、彫刻のような身体を持つ女と恋愛する男の物語である。彫刻は古代の理想を体現している芸術であり、男は作家の化身である。彼は女との恋愛を通じて愛に関する思想を深めていくかに見える。しかし、こうした精神性の追求は暴くべき嘘なのだろうか。それとも、意図的な演出な