記事:筑摩書房 どっぷり浸かって当然とされる金儲けの価値観から距離を置くにはどうしたらいいのか 書籍情報はこちら 金融工学と伊藤のレンマ 数学者の伊藤清先生(1915-2008)は、「伊藤のレンマ(補題)」の考案者として知られる。これは積分に関わる公式の一種で、とても便利な数学的性質を持っている。たとえばブラウン運動のようなデタラメな分子の動きを予測する簡便な方法として、伊藤先生はこの公式を編み出した。 ところがこの公式は、あろうことか金融工学にとって有望な理論として利用されることになった。株でも仮想通貨でもいいのだが、価格が乱高下する相場において、金融工学を用いて確実に利益を得るためにこの公式が使われ出したのだ。 とりわけ瞬時に莫大な取引が可能なデジタル化された金融市場では、一瞬の価格差を突いた取引が必要になる(もちろん私にとってはこんなことは必要ないが、金儲けのための金儲けに勤しむディ
![重田園江さん(明治大学教授)寄稿「金儲けの時代の彼方へ――ある数学者のとまどい」|じんぶん堂](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/2f13af1d1a197d306a8ddffe900de265ce0d4a1d/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fp.potaufeu.asahi.com%2F07da-p%2Fpicture%2F26735145%2F5b8cb3e76bbbe79f396b86203b81c4d6.jpg)