遺伝子で才能の大半が決まる、という考えは根強い。遺伝子は重要だとは思う。けれど、あくまで「環境と遺伝子」のバランスで決まるものだと思う。 私はある酵素を大腸菌に大量に作らせようと、遺伝子を導入したことがある(大量発現系)。その実験はうまくいった。酵素を大量に作り出した。しかし。 その遺伝子組換え大腸菌を培養し続けると、酵素を作る量がどんどん減り、ついには作ってるのかどうか分からなくなった。遺伝子が強力に働くよう薬剤(IPTG)を加えてもダメだった。その酵素を作ることが大腸菌にとって何の役にも立たないから、作らずに済むシステムが動き始めたのだろう。 その実験とは別に、クオルモンという物質を分解できる菌を探す実験を行った。すると、様々な菌がクオルモンを分解する酵素(エステラーゼ)を作るように。菌によって強弱はあるけれど、エサがクオルモンしかない(単一炭素源)状況に置くと、そうした「才能」が否応