歳をとる毎に思い知らされることが、幾つかある。 例えば、人は、ある日突然何の前触れもなく、いなくなってしまうことがあるということ。 さよならを言う隙も与えずに。ありがとうと言う隙も与えずに。あなたに会えてよかったという隙も与えずに。愛してると言う隙も与えずに。 ある日、突然、人は目の前から消えてしまうことがある。 死んでしまうということは、その人にはもう二度と会えないということだ。あの世で会いましょうみたいなことも言えなくはないけれど、そんなにも待てないし、会える保証なんてどこにも会えない。 二度と、会えない。言葉を交わすことも、触れることも、抱きしめることも、キスすることも出来ない。 どんなに嘆き悲しんでも二度と会えない。 歳をとるということは、それを思い知ることだ。別れはある日、突然やってくるということを。 そうして歳をとり、人は悲しみの澱を心に積み重ねる。 歳をとればとるほど、人を好
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