1950年代のオールディーズを背景に、のどかな田舎町に潜む欲望と暴力が渦巻く暗部を、伝統的なミステリーの手法に則って暴き出しつつ、美しい芝生とその下で蠢く昆虫という導入部に象徴されるような善と悪の葛藤が描かれる。不法侵入や覗き見、性的虐待といった倒錯的行為が物語の重要な役割を果たしており、特に性的虐待の描写については公開と同時に論争を巻き起こしたが、結果的には興行的成功を収めることとなった。 大幅な予算の削減と引き替えにファイナル・カットの権利を得て、その才能を存分に発揮した本作が成功を収めたことによって、リンチにとっては本作が新たな転換点となった。またこの作品は、ジャンルを問わず複数の題材を多く盛り込むという以後のリンチの作風を確立させることとなる。 父親の入院を期にジェフリー・ボーモントは大学を休学し、生まれ故郷である田舎町ランバートンに帰郷した。ある日、父親を見舞った帰りに野原を通り