2016年10月22日、熊本市の藤崎台県営野球場。熊本工を代表し、星子崇がマイクを握った。ファンに感謝を述べた後、少し照れくさそうな顔をした。 「本当に、えーと、幸せでございます」 温かい拍手が沸いた。 第78回全国選手権大会決勝で熱戦を演じた松山商と、20年ぶりの再戦。この企画が動き出したのは、昨年4月、熊本を大地震が襲った後だ。星子が、松山商の主将だった今井康剛らに、「やろう。今年しかない」と強くお願いした。 星子は当時の3年生全員を誘うことにこだわり、連絡先が不明だった仲間は探し出した。協賛企業探しや演出を練るため、睡眠時間を削った。「星子が熱すぎて、こっちも遊び気分じゃいられなくなった」とマネジャーだった上木卓が笑う。 この日、参加したのは熊本工から20人、松山商からは当時の沢田勝彦監督ら13人。雨で試合は延期となったが、トークイベントや応援歌の演奏はファンを楽しませた。何より当時