企業の公募増資に関連した「増資インサイダー」問題で、証券取引等監視委員会が相次いで行政処分の勧告を打ち出している。設立から20年、外部環境の変化を捉えて取り組んできた監視委の組織改革が、成果に結びついてきている印象だ。 「プロの領域に踏み込んでいく」──。増資インサイダー問題への取り組みについて、監視委の幹部は、こう意気込みを語る。企業の増資業務を手がける証券会社と、その顧客となる機関投資家の、いわばプロ同士の間で交わされる不正な情報の流れに切り込む取り組みは、監視委が新しいフェーズに進むための試金石、との位置づけだ。 従来の金融行政は、個人投資家・預金者や年配者といった、相対的にリスクへの意識や耐力が弱い人々を保護することに主眼が置かれ、リスク意識や耐力の強い金融機関同士などプロの取引は「自己責任」として深入りしなかった面がある。 こうした姿勢は08年のリーマンショック以降、見直され始め