シンギュラリティ来ない派の中には、来る派をハナっから馬鹿にした調子で、空想と現実の区別がついてないなどとこき下ろす人がいるが、そういうのは心の中で馬鹿にし返しつつも、放っておくしかない。 しかし、ちゃんと論拠を提示して真面目に論じている人たちの意見に限っては、いちおう真面目に耳を傾け、理解に努め、受け容れて考えを改めるなり、冷静かつ論理的に反論するなりするのが礼儀というものであろうと考えてのことである。 この本ではそれなりの分量の言葉が費やされ、話があちこちに及んでいるが、枝葉の部分をばっさりとカットし、根幹の論理だけを抜き出すと、およそ次のようなことになる。 「知」というものは、2種類に大別できる。人間が生きるための実践的な「生命知」と、より高度な普遍的真理にいたる「絶対知」と。 前者は、心をもつ人間という生物が生きるための知的活動である。人間は、生物進化史からみて、特有の不完全さをもつ