2015年度に内閣府が実施した「少子化社会に関する国際意識調査」において、自分の国が「子供を生み育てやすい国だと思うか」という問いに対し「とてもそう思う」と答えた人の割合は、日本が対象4カ国で最も低い8%にとどまった。こうした子育てに対する「窮屈さ」の背景には何があるのだろうか。本稿では、日本社会に根強く残る「家族主義」に注目して考えていきたい。 長らく日本では、女性の就労率の上昇が少子化を引き起こしたと考えられてきた。しかし現在では、女性の就労率と合計特殊出生率に関するこのような通説が誤りであることはすでに多くの国際調査で明らかになっている。デンマークの福祉社会学者エスピン=アンデルセンは、EUのデータに基づいて、女性の就労が普及した国ほど出生率が高くなる傾向を明らかにし、就労率と出生率にはむしろ相関関係さえ存在すると指摘している(『アンデルセン、福祉を語る─女性・子ども・高齢者』林昌宏