I はじめに 欧米の医療社会学では、古くから、生物医学的概念としての疾病(disease)に対照的な “生物心理社会的モデルに基づく病気”の概念構築を試みてきた。 医療社会学者A. アントノフスキーが1980年代までに体系化した健康生成モデル(Salutogenic Model) 注釈1は、この概念構築の 魅力的な成果である[文献1, 文献2]。 健康生成モデルは、リスクファクターよりも健康の原因に着目し、 その決定的原因を遺伝情報等の不変的要素にではなく、 人生経験に基づく一種の世界観に見出す特徴をもつ。 健康生成モデルの体系は、 この領域の多数の理論を統一する枠組みとなる可能性をもち、 欧米の文献では繰り返し引用され続けている。 また、ヘルス・プロモーションの基礎理論としても 評価されている[文献3]。 我が国においては、しかしながら、健康生成モデルはほとんど知られていない。 行動