歴史哲学 ヴォルテール 法政大学出版局 1989 Voltaire La Philosophie de l'histoire 1765 [訳]安斎和雄 一七六二年、ユグノーの商人ジャン・カラスが自分の息子を殺したという科で、トゥールーズの高等法院で死刑を宣告された。悪名高いカラス事件だ。 この事件に関心をもったヴォルテールは、翌年に『寛容論』(中公文庫)を書いた。その二年後にはカラスの冤罪を問うて、再審による無罪を導いた。ヴォルテール七一歳の最晩年のことである。 たいそうな美談のように思えるが、『寛容論』を読んでみると、文体はいささか嘲笑的で、議論も挑発的なもの、必ずしもそういうふうに受けとれない。しかしそれがヴォルテールの意図だとも見えてくる。ヴォルテールを読むというのは、このへんの按配が微妙なのである。 宗教革命このかたフランス社会を乱してきたのは宗教的熱狂者であり、その代表がカトリッ
