『週刊新潮』 2021年7月8日号 日本ルネッサンス 第957回 これからお伝えするのは不条理な離婚のあり様と気の毒な父親の物語である。この悲劇を抉り出したのが、ノンフィクション『実子誘拐ビジネスの闇』(池田良子 飛鳥新社)である。読めば、左翼陣営が如何に巧妙に日本社会に浸透し、家族を崩壊に導きつつあるかが見てとれる。 卒田譲司氏(仮名)は2006年に結婚し翌年長女が誕生した。しかし夫婦は不仲となり、10年5月、卒田氏が仕事で不在のとき、妻は長女を連れて家を出た。 事情もわからない中での突然のことだった。卒田氏は娘に会わせてほしいと懇願し、同年7月、2歳半の娘に会えた。娘は「パパ、手を握ってて」と言って強い力で必死に卒田氏の手をつかんだが、やがて迎えの車に押し込まれた。泣き叫ぶ娘に卒田氏は「必ず迎えに行くからね」「もう少し待っててね」と約束した。 その後、同年9月末にもう一度会えたが、娘と