「なかでもマスクのごときはどこの店でも品切れ続きのありさま。従ってまた、例の一時ねらい奸商[悪徳商人]が出て、すでに粗悪品を売ったり、値段を暴騰させたりしている」 これは100年前の「東京朝日新聞」の記事である(1920年1月19日朝刊5面。なお、読みやすいように一部表記を改めた。また[ ]カッコは引用者註。以下同じ)。 当時の日本も、現在と同じく、感染症に悩まされていた。当時のそれは、「スペイン風邪」と呼ばれるインフルエンザ(流行性感冒)。1918年以降、世界的に猛威を振るい、第一次世界大戦を上回る犠牲を出したといわれる。日本では、軍隊や学校で流行し、38万人以上が亡くなった(内務省調べ)。