1998年。日本で初めてのリノベーション住宅は大阪で生まれた。その「クラフトアパートメント北区同心町」を手がけたのが、1994年設立のアートアンドクラフトだ。バブルはすでに崩壊してはいたものの、不動産価格はまだ落ちきってはおらず、若い人が都心に家を手に入れることなど思いもよらぬ時代である。そんな時期に都心に住むことを、そのための手段を考えたのがアートアンドクラフトを設立した中谷ノボル氏である。 「都心回帰は会社を作った時からの考えです。ヨーロッパの都市では休日も、夜も中心部に人がいて賑やか。でも、大阪の都心部は賃料が高いビルばかりで昼以外には人がいない。人が住めないまちは衰退するのではないか、もっと都心に人が住めるようにしないと。そこで考えたのは中古をリノベーションして利用することでした」。 中古なら30代でも都心に買える。だが、その頃の中古は住宅購入時のメジャーな選択肢ではなかった。新築