著:ウィリアム ルーベル、 訳:堤 理 「新鮮さはそれ自体に価値がある。しかし歴史的に見ると、パンはあたたかいうちに食べられたことはなく、実際、現代にいたるまでの健康指南書は口をそろえて、焼きあがって1日おかなければパンを食べてはいけないと述べていた。パンは冷めるまでめまぐるしく変化を起こす」。 パンの話。厳密に歴史を解説した本というより、推論や主観を交えて自由に書かれている。翻訳モノで、著者はアメリカ在住のフードライター。 紀元前4000年頃にイラク南部に成立した古代都市ウルクやそれに続くメソポタミア文明、古代エジプト、さらにはギリシャ・ローマにおいて、パンは経済や食の基盤だった。それがヨーロッパに広がり、アメリカ合衆国やカナダやオーストラリアへも拡散する。今から2万5千年前には、麦はまだ野生種のものだったが、パンを焼くことはすでに始まっていたという。 品種改良が進む以前の昔の麦は、実を