最初に言っておくと、本書「インナー・チャイルド(ジョン・ブラッドショー)」(参照)の副題「本当のあなたを取り戻す方法」は、私としては賛同しがたい。そもそも「本当のあなた」なるものがあるのかどうかもわからないし、「ああ、これが本当の自分だ」という実感が仮に得られたとしても、それが一般的なことなのか、あるいはその代償もまた大きいのではないかとも思える。その意味でも、本書はお薦めするという類のものではない。 では、なぜこの本を読んだのかというと、関心があったからだ。そして、当然というべきだが、私自身が「インナー・チャイルド」なるものに苦痛を感じていたからだ。 「インナー・チャイルド」というのは、大人になっても心のなかに潜む、傷ついた子供のような心理のことだ。子供のころに得たつらい記憶が今も心的外傷後ストレス障害(PTSD)のように残っていることだと言ってもいいかもしれない。もっとも、本書などにも