この10年ほどで日本での食肉の調理法は劇的に進化した。その最たるものは、食肉の加熱に関するものだろう。飲食店で内部がピンク色のトンカツやポークソテーが提供されても、昭和の頃のように「まだピンク色じゃないか!」と店に文句を言う客を目にすることは少なくなった(ゼロになったわけではない)。そしてこの3年ほどで堂々とピンク色というかロゼカラーの肉を堂々と客に供する店も増えた。 いまから3年前の2011年、アメリカで豚肉の加熱に対する基準が改定された。それまで約71℃(160°F)に設定されていた豚塊肉の加熱基準が引き下げられた。新基準では中心温度を63℃(145°F)まで上げて、その後3分ベンチタイムを取ればいいとなり、牛や羊と同等の加熱基準となった。いわゆる「ミディアム・レア」の温度帯──ピンクやロゼ色での提供が可能となったのだ。 肉の味わいにとって、この約8℃の持つ意味合いはとてつもなく大きい