ゲイル・イェンセンは、34日目に登頂に成功した。彼の登山隊で山頂を制覇したのは、彼と、同行したシェルパだけだった。早朝、朝日が東の空を照らしはじめたころ、ゲイルは、世界で6番目に高い標高(8,201m)を誇るチョ・オユーの頂きからはるか彼方のエベレスト山を見つめていた。腰を下ろすと、バックパックを開けてMDとマイクを取り出し、空気の薄い山頂で、風の音、氷雪が砕ける音、そして、自分自身の声を録音した。 5年後の2006年、ゲイル・イェンセン(アーティスト名は「バイオスフィア」)は、『チョ・オユー』と題したアルバムをリリースした。このアルバムには、チョ・オユーの登山中にサンプル音源としてレコーディングしたものと、登山中に彼が書いた日記をもとにしてつくられた12曲が収められている。 「自分の思いどおりに録音ができるようになるまでは時間がかかったね。コンセプトやアイデアに沿って作品をつくりたいから