2020年5月、台湾の国家人権博物館から一冊の本が出版された。『高一生獄中家書』。少数民族ツォウ族のリーダーだった高一生(ウォグ・ヤタウユガナ)が、獄中から家族に送り続けた手紙56通が収められている。高一生は戦後の台湾で起こった中国国民党による弾圧、いわゆる白色テロの犠牲者のひとりだ。白色テロの全容は明らかでないが、少数民族の指導者たちも多数犠牲となった。彼らのような犠牲があって今の台湾があることを心に刻みつつ、高一生と家族の歩みを振り返る。 台南師範学校時代の高一生(後列左から2人目、高英傑氏提供) 日本統治時代のエリート、矢多一生 筆者はドキュメンタリー映画「台湾アイデンティティー」(2013年公開)において、長女の故菊花(パイツ)さんや次男英傑(アバイ)さんらに取材させていただいた。その際、まだ英傑さんの手元にあった手紙を読ませていただく機会を得た。高一生は数多くの手紙を家族や関係者
「時代ものを一度はやってみたかったので、新鮮だった」。8月末、取材に応じた黒沢清監督はこう振り返った。 第77回ベネチア国際映画祭で見事、銀獅子賞(監督賞)に輝いた「スパイの妻」は、日中戦争の時代に満州で行われていた日本軍の犯罪行為を告発しようとする実業家と妻の物語。神戸市出身の黒沢監督が初めて地元を舞台に、主要場面のロケが市内各所で行われた。 良心とは、正義とは何か。そして夫婦の愛とは…。人間の尊厳にかかわるテーマが展開される。 「その後の日本が、世界がどこに向かうのか、我々は知っている。そうした歴史にどう接するのか、良識が問われる。気の抜けない撮影だった」。時代の波にほんろうされる夫婦の人生を、丁寧な心情表現と、細部にまで気を配った場面作りの積み重ねで描き切った。今回の受賞は、そうした制作姿勢も評価されたのだろう。 1950~60年代、日本人監督のいくつかの作品が金獅子、銀獅子賞のいず
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く