母を失い、話すことをやめた女性ダンサーは、老パントマイマーとの交流を通じて、過去と自分自身に向き合っていく――。シンガポールで映像作家として活動をするリャオ・チエカイが、時空を超えるストーリーテリングで、東洋的な死生観を盛り込みつつ、魂の表現であるダンスというテーマを紡ぐ。極端にセリフが少なく、凝視を促す映像で貫かれている。本作は東京藝術大学大学院にて制作、監督にとっては初めての全編日本で撮影した作品である。(取材・文/稲田隆紀) ――最初にどんなイメージでこの作品となったのか、おうかがいします。 リャオ・チエカイ(以下、リャオ監督):この作品は、私にとってはとりわけ特別なものです。主演女優ハ・ヨンミを題材にした作品をまず意図しました。ふたりで青森の下北半島を旅して、構想を練り、ダンスシーンの表現方法についてカメラを回しながら考えました。その素材は、本作のフッテージに使われています。 ――