MOVIE/TV BOOK Review 『戦争中の暮しの記録』の《一冊》を、『この世界の片隅に』の《一本》に置きかえれば 2016.12.24 「これは、戦争中の、暮しの記録である。 その戦争は、一九四一年(昭和十六年)十二月八日にはじまり、一九四五年(昭和二十年)八月十五日に終った。 それは、言語に絶する暮しであった。その言語に絶する明け暮れのなかに、人たちは、体力と精神力のぎりぎりまでもちこたえて、やっと生きてきた。親を失い、兄弟を失い、夫を失い、子を失い、大事な人を失い、そして、青春を失い、それでも生きてきた。家を焼かれ、財産を焼かれ、夜も、朝も、日なかも、飢えながら、生きてきた。 しかも、こうした思い出は、一片の灰のように、人たちの心の底ふかくに沈んでしまって、どこにも残らない。いつでも、戦争の記録というものは、そうなのだ。 戦争の経過や、それを指導した人たちや、大きな戦闘につい