津波で流された写真は、ボランティアスタッフによって洗い清められる。そこはまさに「記憶の安置所」だった【宇都宮徹壱】 唐突だが、想像してみてほしい。スタジアムのピッチ脇にビニールハウスが建っている光景というものを。きっと誰もが、かなりシュールに思うはずだ。私も最初に「それ」を見た時、しばらく状況がのみ込めずにいた。 震災発生からちょうど2カ月がたった5月11日、宮城県にある七ヶ浜サッカースタジアムを訪れた。案内してくれたのは、ソニー仙台FCの運営委員代理の大谷哲也さん、そして田端秀規監督。JR多賀城駅前で待ち合わせて、大谷さんの運転する車に乗せていただき、最初に向かったのがソニー仙台のホームグラウンドであった。試合が行われないスタジアムの外観は、思いのほか大きな被害を受けていないように見える。だがピッチ上に回ってみると、そこにはビニールハウスが3つも建てられていて、一瞬たじろいでしまった。