かつてのソ連は世界最大の穀物輸入国であり、その原因は畜産による膨大な飼料穀物消費にあった。しかし近年のロシアにおいては小麦を中心とする穀物輸出の拡大が進み、2017/18年度には世界最大の小麦輸出国となった。その一方で、1990年代には壊滅的に縮小した畜産業も2000年代後半以降急速に回復・拡大が進み、養鶏や養豚では国内需要の飽和から輸出促進が新たな課題として浮上してきている。2018年5月に発足した第4期プーチン政権においては、農業関連部門の輸出拡大を主要目標の一つとして掲げており、ロシア農政の課題は、これまでの自給率向上から輸出拡大へとシフトしている。穀物輸出の拡大と畜産物の生産・輸出の拡大の両立は可能なのか、畜産の回復とその背景を追いつつ、飼料穀物消費に着目して考察した。 (1)世界最大の小麦輸出国となったロシア 米国農務省(以下「USDA」という)によれば、ロシアは近年小麦輸出国と
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