白瑠璃椀(はくるりのわん)は大仏に奉献されて正倉院に納められてから1250年、当時の姿をとどめている。高さが8.5cm、さし渡し12cmほどのこのガラス器は、その歴史をぬきに見たらなんら感慨をもたらさないかも知れない。意識して想像力を持ってみていかないとその魅力はわかりにくい。 色は淡い褐色で透明なカットグラスである。厚手につくったガラス椀の表面は底も含めて全面にカットを施している。のちの日本ではこのような細工を切子と表現している。底部には中心に大きな円形文その周りに7個の円を配している。側面には四段、72個の円形文を配している。合わせて80の円形文をその段に応じて均一に削りだしている。 しかもこの円形のカットが互いに周辺部が接しているために、亀甲文のようになり、よりいっそう華麗で完成した姿になっている。1つのカット部分に写る亀甲文様を見れば、ここに飲み物が入ったり、陽光やろうそくの明かり