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昔々のことだ。確かまだ学生の頃だったので、少なくとも10年以上昔の話である。 昔過ぎて経緯が曖昧なのだが、私があるステージに立ってケーナを吹く時、同じケーナ吹きの先輩が観に来てくれたことがあった。ステージの開始前に、ちらっと先輩と会話した。 細かい内容は忘れたが、謙遜のつもりで、ちょっとへりくだった言葉でも言ってしまったのだろう、多分。 先輩は同意するでも怒るでも笑うでもなく、単に一言、こういった。 「コックが「美味しくないですけど」といいながら出した料理を食いたい客がいるか?」 この言葉だけ、物凄く印象に残っている。今でも、この時の一言一句を鮮明に思い出せる。 後になってから理解出来るタイプの言葉だったと思う。この時は、先輩の言葉は他の会話の中に流れ去って、私は普通にステージに立ち、いつも通り演奏を終えた。 後から、私は、先輩の言葉をこんな風に理解するようになった。 時間なり、お金なり、
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