『燕は戻ってこない』著者の桐野夏生さんへのインタビュー後編。前編「29歳困窮女性の代理母出産を描いて見えた『日本の貧困、本当の実態』」に続いて、後編では男性優位の生殖医療の実態、あちこちにはびこる男系幻想、なかなか変わらない社会構造を乗り越える術などについて縦横に語る。 (聞き手:武田砂鉄、撮影:三浦咲恵) 男性優位の生殖医療の実態 ――先日、妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断について、35歳以上に限ってきた検査を35歳未満にも認める指針を明らかになりました。これまで、検査で異常が見つかると9割以上が中絶したというデータがあります。慎重に議論しなければ、優生思想につながる動きが広がっていきそうです。 桐野 広がっていくと思いますね。産まれる前に、あらゆる可能性が排除されるかもしれません。ところで、「卵子の劣化」とは言いますが、「精子の劣化」とは言いませんよね。ちょっと偏り