少し肌寒かったけれど、せめて気持ちだけでも明るくなりたいと思った私は、黒いニットに冬のコートを着るのはやめて、春色のコートを羽織って家を出た 何度も訪れている街なのに、今日は知らない道を行かなければならない 迷いながら初めて歩く道は、眼に映るものだけではなく何だか空気までよそよそしくて少し心細くなった 目的地の病院の名前をようやく視界の中に見つけたとき、少しだけほっとすることができた この横断歩道を渡ったら病院だ 私は、病院の真ん前にある信号が、青に変わるのをぼんやりと眺めていた 左側から走ってきた一台のバスがブレーキをかけた そのときだ 突然ぐらりと目眩がしたかと思ったら、身体のバランスが崩れて倒れそうになった 私は、右側にあった電信柱に咄嗟に手を伸ばす 酷い目眩… もうすぐ病院なのに… ここで倒れちゃだめだよ… そう自分に言い聞かせたとき 右手に触れていたはずの電信柱が ぐにゃりと曲が
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