グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA) 作者: 飛浩隆出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2006/09/01メディア: 文庫購入: 32人 クリック: 186回この商品を含むブログ (178件) を見る ジュリーは白かった。 生成りの麻の服を頭からすっぽり被り、 少年のように短い金髪は夏の陽射しに晒されてプラチナ色に褪せ、 貝殻を列ねた白い腕輪とアンクレットを帯びていた。 ジュールはこのあとその一千年に及ぶ少年時代よりも、はるかに長い生を生きることになったが、その朝のジュリーの姿、赤い瓦と青い空のただなかに一本の若木のように佇っていたジュリーの白さを忘れることはなかった。 冒頭の1行で打ちのめされ、10行も読む頃には傑作の匂いを嗅ぎ取っていた。3頁に入る頃にはそれは確信へと変わり、10頁を過ぎる辺りになると、物語世界に没頭しきって、評価することさえ忘れていた。 「グ