埼玉県・大宮駅からタクシーで20分ほど走ると、日本電鍍工業に着く。敷地の門に古い木の看板が掲げてあるのが目印だ。2階建て社屋の奥には工場があり、迎え出た女性社員も事務服を着ている。いかにも、実直な日本の「ものづくり」会社という感じだ。メインの事業は「メッキ」。来期で創業50期を迎えるこの会社の現社長は、創業者の一人娘である39歳の伊藤麻美さんである。 「こんにちは」と現れた伊藤さんをひと目見たら、誰もがびっくりするだろう。どちらかというと、「外資系企業の広報です」と言われた方がしっくりするような雰囲気の女性だ。元DJで、幼稚園からインターナショナルスクールに通い、米国留学経験あり。そんな経歴の彼女が赤字会社の社長となり、3年で黒字転換したのである。 「父は、会社をつくって経営が安定すると他の人に社長を任せ、また次を起業するような行動派でした。父の会社は5~6社ありましたが、父はオーナーとし