思い入れのあるモノを大切に長く使うという価値観は、商品の飽和する現代社会とは相性が悪い。2年契約の更新と同時に買い換えられるスマートフォンを筆頭に、年々モデルチェンジを繰り返す電化製品は、新しければそれだけ生活の質を向上させてくれる。 自動車もその例外ではない。近年では、残価設定型ローンやサブスクリプションといった購入形態が普及しはじめ、3年~5年での乗り換えも珍しくなくなった。 しかし一方で、自動車は旅行やデートをはじめ「特別な記憶」と結びつきやすく、本人にとって「移動手段以上の意味」を担うこともある。「最新こそ正義」とされる工業製品の世界において、替えのきかない「思い出」や「憧れ」が個人的な価値を形成するのである。 最近では女優の伊藤かずえ氏が、30年間乗った初代シーマをレストアに出し、SNSを中心に話題を呼んだ。こうした「モノへの思い入れ」が世の関心を集めたという事実は、現代において