「ブギーナイツ」や「マグノリア」など、人生の痛みに直面した人々による、複雑かつ緻密な構成の群像劇を得意としていたポール・トーマス・アンダーソン監督が、シンプルでハッピーで強烈なラブストーリーを完成させた。その変化の裏側にあるものは一体? 町山智浩氏が監督に直撃した。(聞き手:町山智浩) ポール・トーマス・アンダーソン監督インタビュー 「恋なんてパンチドランクみたいなものさ」アダム・サンドラーの青空色のスーツ、彼の人生を変えるきっかけになるハーモニウム(小型オルガン)、その他、「パンチドランク・ラブ」で使われた衣装や小道具のすべてがポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)の事務所の床に放置されていた。 「ここの周りでロケしたからね」 PTAの事務所はスタジオ・シティにあった。その名の通りユニバーサル、ワーナー、ディズニー、それにNBCテレビのスタジオが並ぶ町だ。 「僕はここで生まれて、こ